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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)1063号 決定 1956年3月06日

本籍

福島県伊達郡桑折町字西町四三番地

住居

東京都品川区北品川一丁目一三〇番地

無職

小林又吉

明治三一年一二月九日生

右公然猥褻被告事件について昭和二九年一月二二日東京高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人別府祐六の上告趣意一は、第一審判決には所論司法警察員作成南修治供述調書七通の各記載と他の証拠とを綜合して判示事実を認定した旨記載されているが、本件記録には右南修治供述調書は六通しかないから右判決は違法であると主張するけれども、原判決においては、控訴趣意第三点について「司法警察員作成南修治供述調書は六通でなければならないのに第一審判決が証拠としてこれを七通として記載したのは誤であるがこの誤はもとより判決に影響を及ぼすものではない」として論旨を理由なしとして斥けているから右第一審判決における誤は原判決に影響しない。又、上告趣意二は事実誤認の主張に過ぎない。要するに以上は刑訴四〇五条の上告理由に当らない。上告趣意三は、判示の所為は夜間密閉した部屋で特定の客を相手になされたものであるから公然猥褻の行為とはいえないというけれども、原判決挙示の証拠によれば不特定多数の人を勧誘した結果各判示の日判示料亭において集まつたそれぞれ数十名の客の面前で判示の所為に及んだことが認められるので第一審判決事実認定の部にいわゆる数十名の客とは不特定の客の趣旨であると解せられ、従つて右所為がたとえ夜間一定の部屋を密閉してなされたとしても公然猥褻罪の成立を妨げるものではなく、この理由から第一審判決を肯認した原判決は正当であつて論旨は理由がない。

記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島保 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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